議会のペーパーレス化に向けて。桐生とご縁の深い八王子市を視察

本日と明日の2日間の予定で桐生市議会 議会改革調査特別委員会の視察となります。本日は東京都八王子市議会の取り組みを学ばせていただきました。桐生市議会では機能強化のため議会改革を積極的に推進しており、早稲⽥⼤学マニフェスト研究所が実施した「議会改⾰度調査2019」のランキングにおいて、「議会機能強化」で全国1位になるなど高い評価を受けています。しかしながら、大きく遅れている分野がタブレットの導入やペーパーレス化といったICTの分野の改革です。市庁舎の建替えなどの関係もあり、設備面の更新が行えないことが主な要因ですが、新しい議場の完成に向けて今から具体的な検討を行っていく必要があります。

本日、八王子市議会では「議会でのタブレット使用について」を学ばせていただきました。タブレットの導入については、先進地は多数ありますが、八王子市議会の参考になる部分は昨年度導入したばかりというところ。今回の視察では、導入に向けての検討のプロセスや、導入後に明らかになった課題、今後に向けた検討などの状況について詳細にお話をお伺いしました。

まず、タブレット使用によるメリットについて、最大の効果はペーパーレス化による費用の削減です。タブレットの導入により年間62万枚の紙が削減され、310万円の削減効果があったとのお示しをいただきました。また、大量の資料を迅速かつ同時に全議員へ提供でき、差し替えも容易に可能なことから、事務手続きに必要な人件費などの削減効果も大きいのではないかと思います。その他、過去に配付した資料を容易に閲覧できる(文字検索が可能)、

オンライン会議や行政視察のオンライン実施などのメリットがあったそうです。

逆にデメリットとしては、大規模な通信障害や端末に不具合が発生すると全ての資料が閲覧不可能になってしまうこと、複数の資料の閲覧ができない(表示が2画面まで)、本体が重く持ち歩きには不便とのご指摘をされていました。ちなみに、八王子市議会が導入しているiPadpro(12.9インチ)は800g弱の重さだそうです。その他、操作スキルに差が生じることや、電源コンセントやモバイルバッテリーの準備についても課題になっているとのことでした。

また、経費についても大きな課題です。八王子市での年間ソフトウエアライセンス料等は1,122,000円(税込)、タブレット端末通信料等は3,603,420円(税込)とのことで、これらは議会費から賄われています。当然ながら、市の一般財源から負担されるものであり、私的な利用に流用されないような厳格な使用ルールの整備が伴う必要があります。その部分に関しては「八王子市議会会議システム用タブレット端末運用規定」を整備して「議員活動に必要な範囲内に限り端末を使用するものとする」と明確に規定されています。

そして、桐生市における導入への最大のネックは合意形成ではないでしょうか。ちなみに、既に桐生市議会の本会議や委員会においてはタブレット端末の持込は許可をされていますが、共通の会議システムを導入している訳ではないので、資料配布は紙の支給に限られており、書類の配布も書面とメールの併用となっている状況です(いまだにFAXも現役で使用されています)。これらを一気にペーパーレス化するとなると、年代などの差により端末の操作が難しいなどの意見が出ることが容易に想定されます。なお、八王子市議会でも当初は慎重な意見が多かったようです。

そこで八王子市議会では、会派代表者会において、議長諮問機関としての検討会の立

ち上げを決定し「議会改革を推進する会議」を設置、その諮問結果を最大限尊重するように申し合わせたそうです。多様な考え方の議員が集まる議会の中において、このように決定プロセスに対する合意形成を丁寧に行っていくことは非常にたいせつなことだと感じます。そして、タブレットの導入が決まった後も一気にペーパーレス化を強行するのではなく、講習会を行ったり、希望する方には紙資料も配るなどの移行期間を設けて、約1年が経過した直近の議会においてはほとんどの議員がペーパーレスに移行するに至ったとの経緯をお話しいただきました。八王子市議会の平均年齢が若いこともあるかも知れませんが、導入の検討から運用まで非常にスピーディーに進展した経緯を学ばせていただきました。

地方議会は住民の代表であり、社会がDXへと進んでいく中で、自ら積極的に変革に取り組んでいく必要があると考えています。庁舎整備に向けてハードの環境は整うことが想定されていますので、議会側も仕組みや制度の検討を遅滞なく行い、スムーズにペーパーレス化に移行できるよう、八王子市議会での学びを今後に活かしていきたいと思います。

ちなみに、八王子は桑都、桐生市は織都と呼ばれ、互いに織物の歴史文化で日本遺産に認定されているとともに、約400年前に桐生市新町の町建てを行った大野八右衛門は八王子出身という縁が深い地域。日本のシルクロードで結ばれたき桐生と八王子のご縁をこれからも大切にしていきたいと思います。

この度ご対応いただきました八王子市議会の皆様に心より感謝申し上げます。