ミュージアムだけじゃない本当の役割とは?ところざわサクラタウンを視察

昨日、1月15日は「関東若手議員の会 関東公式研修in埼玉」に参加。株式会社KADOKAWAが開発した「ところざわサクラタウン」を視察させていただきました。本棚劇場で有名な角川武蔵野ミュージアムで有名な施設です。なお、今回の研修会の講師は株式会社KADOKAWAレクリエーション事業局局長 西澤 様にご担当いただきました。
サクラタウンの開発に至った経緯としては、出版が主業であるKADOKAWAが直面した書籍離れという課題です。2003年に20,880店あった書店数2023年には10,918店と20年間で半減してしまいました。書店が無くなり書籍を買わなくなった、ネット販売や電子書籍はあるが、書店というお客様との接点が無くなっていくことに対して出版業者業者として何をしなければならないのかという課題に直面し、老朽化した倉庫などの建替えの検討も相まってサクラタウンの開発へと繋がっていきます。


元々この土地は旧所沢浄化センターがあった場所で所沢市の公有地となります。東所沢駅から徒歩圏内の場所ではありますが、住宅街と公園に隣接した場所で集客施設を作るには少し厳しい立地と言えます。その場所をKADOKAWAが取得して出版業界のDXを推進する拠点としてまちづくりを行いました。一般のお客さん向けの施設として角川武蔵野ミュージアムや神社、ホール、Eスポーツ施設、テナントなどが入居し、特にミュージアムはメディアにも取り上げられるなど人気の施設となっていますが、実は施設の大部分はKADOKAWAの工場&オフィスとなっています。4、3階では製造を担い、5階にはオフィスが入居、1,000名の従業員を収容できる大規模な施設となっているのです。
KADOKAWAでは主要な書店にタブレットを配布して書店から直接オーダーが来るようにし、1日で本が届く仕組みを構築しました。デジタル印刷を活用して小ロットで印刷機を回し、1冊売れる度に発送されていきます。これらは全て自動化されており、販売部数が減少しても効率的に書籍を発行できる体制が整いました。


サクラタウンはコロナ禍となる2020年11月にオープン。1000人働ける場所が、リモートワークやフリーアドレス化の進展などにより3割程度の出勤で済んでしまう時代となり、空いたスペースは角川ドワンゴ学園のN高・S高の生徒が毎日500名通うキャンパスにも活用されています。美術部やEスポーツ部などの拠点にもなっているそうです。ちなみに、桐生市には今年4月に角川ドワンゴ学園の3つ目の本校となるR高校が開校しますので、少なからぬご縁を感じます。
さて、書籍離れとは言えKADOKAWAではいまだに出版部門が売り上げの5割を占めています。出版で作り上げたものを別の分野に展開していくという意味でもサクラタウンが重要な位置付けを持っているようです。例えばコミックやYouTuberなどの企画をミュージアム、ショップ、フード、本棚劇場のプロジェクションマッピング、神社の御朱印など、施設内で一体的に展開することで全国から広く集客を図っています。また、雑誌「ラーメンWalker」がプロデュースするキッチンでは、出版社との繋がりで有名店の店主を呼んで週替わりで出店していただくなど、メディアを持っていることを活かした展開が実行されています。
一般的には隈研吾さんが設計した角川武蔵野ミュージアムの外観や本棚劇場のプロジェクションマッピングが有名で、私もそのイメージでいたのですが、民間会社が社会に提供できる価値を具現化するために一つの街を作り上げたという、非常に珍しいまちづくりであるという理解に変わりました。しかもそれが都心ではなく、郊外の一等地とは呼べない立地で挑戦しているという事実に驚きを隠せません。



これからの地方都市は小さな行政となり、いかに民間活力を導入してまちづくりをしていけるかが鍵になります。民間との連携に対する柔軟さ、民間に対する支援体制の手厚さなどにより、民間企業に選ばれる行政運営が求められているのかも知れません。桐生ではここまでの大企業によるまちづくりは難しいかも知れませんが、これから多くの公共施設跡地の活用が問題となって来ることが想定される中で、それらを活用した今後のまちづくりにおいける一つの事例としてサクラタウンの取組みはとても参考になりそうです。
ちなみに、地元出身で角川武蔵野ミュージアムの展示施工で活躍している佐藤亨さんともお会いすることができました。色々とご解説をいただきありがとうございました。