電脳都市・桐生に向けて。2024TRON Symposium
本日は渋谷パルコDGビルで開催された「2024 TRON Symposium」に参加させていただきました。TRONプロジェクトは、坂村健 氏(東京大学名誉教授)を中心に1984年に発足し、現在までにOSからIoTネットワークまで様々なコンピュータ分野の開発が進められてきています。TRON(トロン)は日本発のOSであり、90年代に貿易摩擦による圧力などから「アメリカに潰された国産OS」と認識している方も多いかも知れません。しかしながら、実は組み込み型OSとしては世界シェア約60%と現代における世界最大のシェアを持つOSとなっており、自動車のエンジン制御やデジタルカメラやスマートフォンなどの民生品から、工場内の機械制御といった産業分野まで、様々な分野において世界中で幅広く利用されています。
本日は坂村健氏をコーディネーターとして3つのテーマでセッションが行われました。一つ目は「地域DX」ということで、東洋大学情報連携学部のお膝元でもある東京都北区の山田加奈子 区長などをゲストに商店街の活性化、高齢者見守り、防災・減災など、具体的な地域課題に対して、データに基づく可視化と分析、産学官民の多様な連携による地域のデジタル化の展望について議論が行われました。自治体としてのデジタル化としては書かない窓口、電子申請、AIチャットボット、ペーパーレスなど日本全国でほぼ同じ方向に進んでいますが、EBPM(Evidence Based Policy Making:証拠に基づく政策立案)による政策的な検証を行っていくこと、そしてスピード感を持って実施していくことが重要だと感じます。
二つ目のテーマは「公共交通オープンデータ」です。JR東日本の伊勢勝巳 副社長をゲストに、公共交通オープンデータ協議会(ODPT)やJR東日本の取組みを起点にしながら情報連携についての議論が進みました。最近、Googleマップなどで鉄道の位置情報などが表示されるのを目にしますが、それらはODPTが規格を取りまとめて一元化した情報をから反映されているものとのこと。群馬県内ではMaeMaaS(現GunMaaS)で先行する前橋市内のバス事業者6社が加盟してサイネージに活用されるなどの例がありますが、まだまだ地方の中小鉄道・バス事業者は参画しておらず、それらのリアタイム情報はGoogleマップなどに反映されることはありません。自治体の加盟は無料とのことなので、まずは桐生市が会員となり、おりひめバスなどの連携に取り組んでいくことからがスタートでしょうか。上毛電鉄やわたらせ渓谷鐵道にもぜひ参画していただきたいですね。そのための行政的な支援も研究していきたいと思います。
三つ目のテーマは「2030年の電脳集合住宅」となります。都市再生機構(UR)の小塚郁武 氏をゲストに、2030年の少し先の未来の住まい方に関する研究会「Open Smart UR研究会」の取組みについてご解説いただきました。東洋大学とURが連携し、机上ではなくその時代で実現ができる最上級のものに挑戦していこう取り組みです。Open Smart Housingプラットフォーム(住宅OS)を構築して、住宅に様々なセンサーを設置。共通のインターフェイスにより既存のスマートビルやスマートホームに関連する様々な企業と連携して、さらには様々なサービス提供企業(宅配、コンビニ、クリーニング、警備など)との連携を行うことで、「魅力的なまちづくり」「多様な住まい方」「安心して暮らせる環境」の実現を目指していくとのこと。URとの団地での電脳住宅の実証実験は進んでいますが、ぜひ地方版の既存住宅での電脳住宅の実証試験や自治体との連携の分野では桐生市を実験場に選んでいただけると嬉しいですね。
全体を通して感じたことは、公益的なオープンデータをどのようにシームレスに提供していけるかということです。地方自治体においても様々なデジタルサービスが乱立していますが、それらを一元的に取りまとめるプラットホームの必要性、そしてオープンデータを意識した自治体運営が非常に重要だと感じました。地方都市が電脳都市(スマートシティ)となる時代がいずれやってくるのなら、高齢化が進展する桐生こそいち早く挑戦していくべきだと思います。