まち全体で取り組む循環型農業。福井県池田町
先月、桐生市議会経済建設委員会の視察で福井県と長野県にお伺いいたしました。3ヶ所の視察地の概要を順次掲載しています。
2日目は、福井県池田町に寄らせていただきました。池田町は人口約2,200人、高齢化比率約47%の中山間地域で、桐生市でいうと黒保根町に近い環境を持った自治体と言えます。池田町では農業を基幹産業として、まちづくりに繋がる循環型農業に取組んでいます。
まず、農産物の生産では「ゆうき・げんき正直農業」として、低農薬から無化学肥料、完全有機栽培までの3段階を独自に基準化して認証しています。JISの有機栽培の要件を満たすことのハードルを考えると、自治体独自の基準で現実的な段階設定となっており、有機・無農薬栽培への参入をし易くする良いアイディアであると感じた次第です。
続いて販売面においては福井市内のショッピングモールに池田町産マーケット「こっぽい屋」を開設して「ゆうき・げんき正直農業」で採れた野菜や加工品を販売しています。また、町内にもまちの駅「こってコテいけだ」を開設しており、販売と食堂を合わせて年間約1億円を売り上げるなど、交流人口の増加と消費拡大において大きな成果を生んでいる印象です。加工品の製造としては漬物加工工場「おこもじ屋」や、町民が加工品の加工・開発に利用できる「食LABO」を開設するなど、6次産業化を積極的に推進しているところも大きな特徴と言えます。特に食LABOはここで商品化に挑戦したことをきっかけに独立に至った事業者も生まれるなど、地域の企業支援や仕事づくりの面でも大きな価値がある取り組みです。桐生市でも同様の施設を望む声は多く、黒保根町や新里町などのこのような施設が整備されると6次産業化に大きく寄与するのではないかと感じました。
続いて循環についてですが、池田町では「食Uターン」事業として家庭の生ごみを週3回、ゴミステーションで回収する仕組みを確立しています。回収はNPO法人に登録する約100名(人口の3%)が担い、畜産センターと併設のアグリパワーアップセンターにて牛の糞と生ごみを混ぜて1.5カ月発酵させて堆肥を製造。「ゆうき・げんき正直農業」で活用されている他、一般にも販売され、生産から販売、回収、土づくりに至る循環型農業が町内で完結しているのです。ここまで徹底して循環型農業に街ぐるみで取り組んでいる自治体は初めて知りましたが、池田町のスケール感だからこそ完成したものと感じるとともに、桐生で置き換えるなら黒保根町や新里町の地域内で完結するような同様の循環型農業の確立は十分可能であるとも感じました。
桐生市では現在、給食残渣を活用した農産物生産による給食による地産地消の取り組みを開始しています。ここに一般家庭からの回収の仕組みも組み合わせることができれば、池田町のような地域を挙げた循環型農業の入口に立つことができるのではないでしょうか。ぜひそのような視点で、桐生市内での実現可能性について検討をしていきたいと思います。
なお、今回の視察では座学の他に、生ごみ資源回収車や漬物加工施設、食LABOなどの外観を見学させていただいた他、堆肥製造施設やまちの駅こってコテいけだの現地視察の他、昼食では農村レストランである「おもちの母屋」も利用させていただき、池田町の農業の魅力だけでなく、街としても魅力も十分に感じ取ることができました。行政視察では異例の全行程5時間弱に及ぶボリューム満点の視察をご設営いただき、最初から最後まで丁寧にご説明をいただきました池田町役場の皆様、及び池田町農業公社の皆様に心より感謝申し上げます。