自治体が自ら取り組むジビエ加工センター。長野市
先月、桐生市議会経済建設委員会の視察で福井県と長野県にお伺いいたしました。3ヶ所の視察地の概要を順次掲載しています。


視察3日目は長野県長野市のジビエ加工センターを視察させていただきました。全国でも数少ない公設のジビエ加工場です。長野市ジビエ加工センターは北陸新幹線の長野駅から路線バスに揺られること約30分、中条という中心部からみると西端の中山間地域に所在しています。


まず、視察の前に昼食で道の駅中条に寄らせていただき、ジビエ加工センターで加工された鹿肉を利用したメニュー(鹿肉カレー)を食べることができました。道の駅の駅長さんにもお話をお伺いすることができ、ジビエ加工センターで加工された鹿肉を使用して商品開発を行い道の駅で販売していることや、ジビエの販売についての取り組みなどについて解説をいただき、販路の開発についての重要性についても確認することができました。
さて、長野市ジビエ加工センター立ち上げの経緯ですが、農作物に被害をもたらすイノシシや二ホンジカを地域資源「ジビエ」として無駄なく有効活用するため、平成31年に開設された施設となります。総事業費は約3億5,400万円、その内1億2千万円が国からの交付金です。施設構成としては解体室、熟成室、処理室、冷凍室などからなり、個体の搬入から加工、出荷までの一連の流れがこの施設で完結している形となっています。

長野市では、ジビエ加工センターができる前は捉えたイノシシや鹿は地中埋設等の対応が取られていたそうです。直近では1年間で捕獲される二ホンジカの1,569頭の内、849頭(廃棄10頭)が搬入(令和5年度)されるまでに至っています。ジビエ加工センターの稼働当初は廃棄となってしまう頭数の割合も多かったそうですが、現在ではどのような鹿が加工に適しているのか、また留刺しの際のコツや血抜きなどのノウハウがハンターに広く共有されて、ほとんど廃棄が出ることが無くなったそうです。ちなみに、イノシシは豚熱の影響により現在は出荷できない状況となっているとのことでした。
これだけの出荷量が確保されてくると気になるのが販路の問題です。まず、ジビエにネガティブなイメージを持っている大人が多いことから、子ども達に美味しさを知ってもらおうと給食でのジビエ提供を開始。大人に向けてはジビエのブランド化やイベントでのPRなどを行い、現在では供給よりも需要の方が上回る状況にまで至っているそうです。収支については令和4年度実績で収入が1,786万円に対して経費が2,680万円と赤字の状況で、これはフル稼働したとしても黒字化は難しいとのことでした。トータルで赤字の事業とは言え、年間1,000万円弱の赤字で、有害鳥獣対策に従事するハンターのモチベーションを高め、廃棄されてしまう鹿を資源として流通させることができていることには、経費以上に大きな効果をもたらしていると感じたところです。

現在、桐生市内では東日本大震災による放射能汚染の関係でジビエの食肉としての流通ができない状況が続いています。一方で、群馬県内では、高崎市内の民間加工場において全量検査によりジビエの加工が限定的に開始されました。
現在、桐生市内での有害鳥獣駆除により捕獲されたイノシシや鹿は清掃センターにて焼却処分されています。残念ながら桐生市内にはジビエの加工ができる施設が存在しませんが、まずは出荷の解禁を見越して民間の加工場の誘致も含めた可能性を検討し、命を無駄にすることなく活かしていくための具体的な方法について道筋を建てていくべきと感じた次第です。
この度は現地視察を含めて手厚いご対応をいただきました長野市役所の皆様、長野市ジビエ加工センターの皆様、道の駅中条の民様に心より感謝申し上げます。