森林環境譲与税の有効活用と活用率向上に向けて。福井市を視察
先月、桐生市議会 経済建設委員会の視察で福井県と長野県にお伺いさせていただきました。合計3ヶ所の視察について概要を記載いたします。
1日目は福井県福井市へ。3月に北陸新幹線が福井県内まで延伸され、駅前周辺等は再開発などが進み街中には活気を感じます。福井市は県庁所在地であり、人口約25万人を擁する中核市です。農業では稲作が中心となりますが野菜などの生産も盛んであり、林業では市域の約60%が山林となっています。
福井市での視察項目は「第2次福井市農業活性化プラン及び森林環境譲与税の事業内容について」となります。通常の行政視察では1項目が基本となりますが、今回は当委員会が「農林振興」を所管調査項目として活動していることから、通常よりも多めの時間をいただき、2項目についての視察を実施させていただきました。手厚いご対応をいただきました福井市役所の皆様に感謝申し上げます。
さて、最初の農業活性化プランですが、福井市の農業を取り巻く環境として、平野部では市街化等の進行に伴う農地の減少、中山間地域では担い手不足などにより農地の管理が十分に行われないことが課題とのことでした。この2点に関しては桐生市を含む全国の地方都市共通の課題だと感じます。特に中山間地の農業において、水田では雨水を一時的に貯めることで洪水や土砂崩れを防いだり、水生生物を育み、有害鳥獣が人里に下りてくることを来ることを防ぐなど、農業以外の役割とされる多面的機能が期待されているところです。これらの多面的機能の発揮において、福井市では住民参加型の取り組みを推進していることが一つの特徴と言えます。農地維持支払交付金や資源向上支払交付金においては、水路や農道の草刈りや生物の調査などにおいて地域住民や子ども達にも活動に参加してもらい、参加者には補助金から図書カードなどの日当を支払うなどの取り組みが実施されています。このような、住民にも当事者意識を持ってもらい多面的機能の維持に取り組んでいく仕組みはぜひとも桐生市でも導入していくべきだと感じます。
また、農地・農村環境の維持・活性についても重点的にご説明いただきましたが、福井市では農家レストランや農家民宿などのコミュニティビジネスを育てることにより、交流人口の増加を図っています。これらの開設に県市が連携して補助金を支出しており、令和5年度時点で農家レストランが9軒、農家民宿が43軒開設されるに至っているのです。このように観光と農業を結び付けた取り組みは群馬県内ではあまり進んでおらず、市街地と農村が共存する桐生市では参考にすべき事例だと感じました。
続いて、後半は森林環境譲与税の活用についてお伺いしました。森林環境譲与税は、森林の整備やその担い手の育成、普及啓発などに活用される新たな税制で、今年度からは国民負担も始まっており、その使い道に大きな注目が集まっています。森林環境譲与税は国からの交付金であり、森林面積や人口によってその交付額が変わります。これらは森林整備のために活かされるため、目的が定められた譲与税であり、各市において活用に向けたビジョンを持つことがたいへん重要です。福井市では森林環境譲与税の活用に向けたガイドラインや基本方針を定めて積極的に活用を行っています。具体的には幼稚園や保育園などの子どもの居場所の木質化に対する支援や、林業用の作業道整備、U・Iターンによる新規就業者支援、自伐林家への搬出支援、林業に関する技能講習、林業機械のレンタル、里山の間伐整備など様々な支援メニューが用意されています。福井市では森林環境譲与税の88%が活用されている状況で、4576万円が交付されて1億1,998万円が積み立てられたまま(令和4年度)の桐生市とは対照的です。積極的な活用に当たってはわかりやすい冊子を作ったり、森林環境譲与税を活用した工事にはわかりやすく表示をするなど、市民一人一人に対して税の使い方を明確にする工夫がされており、それらの周知の成果が高い活用率に繋がっているのだと思います。
福井市の森林環境譲与税の活用については、項目一つ一つは決して特別なことを行っている訳ではありませんが、目的税である森林税の使い道を目的に沿ってしっかり有効活用しているという姿勢に非常に好感を持った次第です。桐生市においては目的に沿った有効活用がされているとはいい難い状況であり、バランスのとれた福井市の事例を参考に桐生市でもより積極的な活用が早急になされるよう、しっかりと当局に提言を行っていきたいと思います。