恥を知れ!安芸高田市 石丸市長が投げかける地方議会の在り方

安芸高田市 石丸市長

4月に全国若手市議会議員の会の研修会としてお話をお伺いしてきた広島県安芸高田市の広報6月号に、私のコメントを掲載いただきました。研修会の講師を務めていただいたのは、共通の知人を通して繋がった石丸伸二市長です。
その石丸市長の話題が、今週各メディアで大きく取り上げられました。10日の安芸高田市議会において、市長より提出された議員定数を16から8に半減する改正案の採決に注目が集まったものです。結果は賛成1、反対14で否決されました。
石丸 市長が市長選に出馬したのは、2020年に広島県内で発生した大規模買収事件により前市長らが辞職したことを受けてのこと。選挙一カ月前に大手銀行を退職し出馬表明、市政改革を訴え、初当選を果たされました。37歳の若さで当選された石丸市長が全国から注目されている理由はTwitter等を活用した発信力と、「居眠り疑惑」に端を発した議会との対立構図にあります。その後、全国公募した副市長人事を市議会が否決し、市議会が財政状況を理由に副市長の定数を2から1に半減する条例改正案を可決したことなどが、今回の議会定数半減の条例改正案の提出に繋がっています。
今回も「恥を知れ!恥を!」というコメントが注目を浴び、市長VS議会の感情論と思われがちですが、就任以来、石丸市長の姿勢は一貫していて「説明責任」という言葉を繰り返しています。今回の定数半減に対しても「議員定数そのもので議会の機能不全がただせるとは思っていない。今やろうとしているのは問題提起である。」と、コメントしており、市民の関心を高めて健全な議会に生まれ変わらせるためには一時の市政停滞はいとわないという使命感を感じさせます。

安芸高田市 石丸市長

石丸市長からの問題定義を地方議会はどのように受け取るべきなのか。それは、市民への説明責任と、市民から市政への関心を高めることにあるのではないでしょうか。議会の定数については、今回の安芸高田市における半減案が妥当かどうか私はわかりません。それは、自治体によって人口規模も、住民が求める政策も、課題も全く異なり、答えが多様であって良いと思うからです。市民に説明できて、市民が納得できる形を模索し続けることが健全な議会の姿であると思います。
例えば、極端な例で申し上げると、同じ予算内であれば現在の桐生市議会の定数22名を倍の44名にして、一人当たりの報酬を半分にしても良いと思います。そうすれば、倍の人数で市民の意見を聞くことができ、主婦や会社員など多様な立場の声が議会に届けやすくなると考えるからです。ただし、そのためには兼業を前提とした休日・夜議会や、議員一人ひとりの仕事量の見直しなど、抜本的な改革も合わせて検討が必要となります。
ちなみに、桐生市の市議会議員は人口当たりで計算すると約5,000名に一人です。人口約2万7千名に16名の議員がいる安芸高田市では約1,700名に一人。桐生市の議員が2倍いても安芸高田市よりは人口比で少ない計算になります。ちなみに、桐生市との合併当時、人口約16,500名だった旧新里村議会の定数は18名であり、人口当たりだと約900名に一人の議員がいたことになります。
旧新里村の村議が多すぎたのか、今の桐生市議会が少な過ぎるのかと単純な比較はできません。当時の新里村議の皆さんは各地区の代表のような役割を持ち、地域を周り細かな相談に乗って、直接村役場との御用聞きのような役割を果たして村民にも頼られる存在であったのだと思います。一方で、現在の桐生市は10万人都市であり、議員に求められるものは村議の時代と同様の役割とともに、より専門性を持ち、将来に向けた先導役となっていくようなリーダー像も兼ね備えなければならないのだと思います。
地方議会は二元代表制と呼ばれ、議会と首長が共に公選職であり、議会と市役所当局が対峙しあう構造です。その構造は、互いにとって推進力にもなりますし、抑制する役割もあります。その中で最も悪い状態は惰性で進んでいる状態ではないでしょうか。互いに信頼関係を築きながらも、緊張感も持ち、議論を交わし、互いにアクセルとブレーキを踏みあえる関係こそが、市民にとって健全な地方議会の在り方なのではないかと私は考えています。
地方議会を変えていく原動力。それは市民に興味関心を持ってもらうこと、選挙に足を運んでもらうことからがスタートです。石丸市長から投げかけられた「問題定義」から全国の地方議会への関心が高まっていくことを期待しています。


今回の話題について、詳しくは下記動画を参考にご覧下さい。
【安芸高田市】39歳石丸市長「恥を知れ」怒りの訴えも「議員半減案」は”否決”(広島ホームテレビ公式ニュースチャンネル)
https://youtu.be/i2DiRy64P24