防災とコミュニティ
昨日と今日の2日間、鹿児島県霧島市にて開催された第81回 全国都市問題会議に参加させていただきました。この会議は全国市長会などが主催するもので、全国の市長、市区議会議員、及び行政関係者が集う約2000人規模の全国会議となります。
今年のテーマは「防災とコミュニティ」となりますが、台風15号や台風19号など、昨今日本全国で頻発している災害の発生状況を踏まえると、時代に即した有意義なテーマ設定であると感じます。昨日は基調講演と一般報告が行われ、鹿児島県における火山と防災の歴史や、霧島市長による火山防災の取り組みの報告が行われました。
鹿児島県の地形の特徴として、火山の噴火により流出した火砕流が高温で堆積して、約100mのシラス台地を数多く形成していることが挙げられます。火砕流からガスが抜けたことにより空洞や亀裂が多数でき崩壊の危険性があることから、空堀などより水の流れをつくるなど、自然と共生する工夫を行いながら火山と共生していることが印象的でした。桜島は土石流の流れを制御する取り組みでアジアでも先進地であり、「砂防」という言葉は世界でもそのまま通用する言葉となっているとのこと。桜島のような活火山の直ぐそばに70万人都市があり、青森市のように積雪が1mを超えるような豪雪地帯に30万人都市があるなど、日本と厳しい自然の共存は世界的に見ても稀にみる環境とのことです。桐生市においても、渡良瀬川と桐生川という一級河川に囲まれ、背後の赤城山も監視対象からは外れているものの、活火山となっています。日本列島、どこに住んでいていたとしても、厳しい自然環境の中に住ませていただいているという条件に違いありません。
昨日二つ目の一般報告では、今回の本題である「災害とコミュニティ」と題して報告がありました。阪神淡路大震災で公助の限界が指摘されてから、防災において共助としてのコミュニティに大きな期待がされています。今回、全体の会議を通して印象的だったのはコミュニティという言葉が抽象的で具体性がないとの指摘です。コミュニティと一言でいっても社会関係、社会集団、地域的アイデンティティなど様々な要素からなり、コミュニティ=町内会という考え方だけではなく、隣組、町内、学区、神社など様々なコミュニティに横串をさしていくような仕掛けづくりが重要だと痛感しました。コミュニティは行政から作ることはできません。物理的に街が無くても、繋がり合う人と人の集団があればコミュニティは存在する。そして、コミュニティがあれば街は復興する。防災・減災・復興を考えるうえでコミュニティは欠かすことはできず、一番身近な生活コミュニティがしっかりしていないと、防災のためのコミュニティは構築できないということが結論なのだと思います。誰しもが必要性を気づいていながら、一朝一夕で成し遂げられるものではないことも一つの事実です。
また、もう一点目から鱗だったのは、避難行動は「個人個人の行動」ではなく「集団の行動」であるとの指摘です。個人に呼び掛けても避難のスイッチはなかなか入らず、避難する人を目にして初めて行動を始めることができる。このことは、先月12日の桐生市における避難勧告の際に体感したことに通じます。私がFacebookに避難所の避難人数を掲載したところたいへん参考になったという反響を多数いただいたのです。みんなが避難しているとわかれば、避難する動機に繋がるということに気づかされた体験となりました。
その他、昨日は「平成30年7月の豪雨災害における広島市での対応」について松井一寛 広島市長より、「火山災害と防災」について防災科学技術研究所 火山研究推進センター長より、それぞれ報告がありました。
続いて最終日となった本日は「防災とコミュニティ」をテーマとしたパネルディスカッションが開催されました。コーディネーターは追手門学院大学 地域創造学科長 田中正人 教授です。パネリストには静岡県三島市長や和歌山県海南市長などの自治体の長をはじめ、大学教授から自治体関係者まで様々な立場の5名により意見が交わされました。
ここでの視点は、災害は自然現象だけで発生するものではないということ。例えば無人島で大雨が降ろうが、人の手が入っていない山奥で大規模な土砂崩れが起きようが、そこに生命や生活がなければ災害が生じません。当たり前のことですが、これはとても重要な視点です。高度経済成長期からバブル期まで、日本は大きな災害を経験してこなかったことから、住むのに適さない土地まで開発を広げて災害を配慮しないまちづくりが進んでしまいました。そこにコミュニティの希薄化、災害リスクの複雑化、自然災害の多様化などにより、防災・減災は益々困難なまちの形となってしまっています。このような状況を踏まえるなかで、防災・減災のためにはコミュニティの連携強化・統合・再構築を図っていく必要がある。つまり、ここでの結論も「コミュニティ」に行き着きます。
災害対応のみならず、少子高齢化への対応においても、防犯においても、健康寿命延伸においても、コミュニティの強化が叫ばれています。今回の会議の教訓として感じ取ったことは、コミュニティ強化によりこれらの課題を解決するという考え方ではなく、災害に強い街をつくるためにはコミュニティ強化をしなければいけないといった、目的が先行する考え方が必要であるというです。そういった危機感を住民同士で共有することで、共通の目的をもって前向きにコミュニティに参加してもらい、結果的にコミュニティの再構築に繋がっていくのではないでしょうか。
ではどうすれば成し遂げることができるのか、それは地域ごとの特性を踏まえた答えがあり、お手本となるひな型はありません。まずは地域の皆さんと防災について話すこと、地域の危険性や防災の重要性を共有していくことが第一歩となりそうです。