先鋭的な庁舎と、先進的かつ堅実な議会ICT化。三重県いなべ市
昨日昨日の2日間、桐生市議会 議会運営委員会の視察へ。1日目は三重県いなべ市に訪問させていただきました。いなべ市は三重県北西部に位置し、平成15年12月に員弁郡の4町が合併して誕生した約4万5千人の人口を有する都市となります。市域の6割が森林で、市内にはトヨタ車体やデンソー、太平洋セメントなどの大企業が立地ており、トヨタ車体はアルファードやヴェルファイアの世界唯一の生産拠点として知られます。西桑名駅から三岐鉄道 北勢線のナローゲージ鉄道といわれる小さな車両に揺られること約1時間、市役所最寄りの阿下喜駅までのアクセスは決して良いとは言えません。しかしながら、名古屋への車のアクセスは約60分、更には現在東海環状自動車道の整備が進んでおり、令和6年度には市役所横の(仮称)北勢ICの開通が予定されているなど、道路網においては非常に利便性の高い都市と言えそうです。
今回のいなべ市での視察テーマは「タブレットを使用した議会運営について」となりますが、まず市役所に到着して驚かされたのは令和元年にオープンしたその庁舎です。「ふれあいの森」と称される森の中に開かれた庁舎は、2階建ての行政棟や議会棟などの他、おしゃれなレストランやショップ、ジビエの工房、パン屋さんなどが森の中に並び、まるで軽井沢のようなリゾートに来た雰囲気です。これらの施設の全てを民間ではなく、いなべ市が整備しているとのことを聞き更に驚かされました。
そんな先鋭的な庁舎を持ついなべ市議会は、タブレットの活用において先進的な取り組みを行っています。令和元年に新庁舎となったいなべ市に対し、桐生市でも令和7年1月に新庁舎の併用開始が迫るなか、議場のICT化も含めて、これまでいなべ市議会がどのように取り組みを推進してきたのかをご教授いただきました。
いなべ市議会ではペーパーレス化や情報共有、日程調整など日常の議会活動を円滑にすることを目的にICTの活用を推進。平成29年度に議会運営委員会で協議を開始し「いなべ市議会情報通信技術(ICT)推進基本方針」が策定されました。この基本方針を根拠としてタブレット端末(20台)などにかかる予算を市当局に対して要求し、平成30年にタブレットを導入しています。桐生市議会においても、新議場に間に合うようICT化を推進していくに当たり、予算要求のための根拠をしっかり持って、議会として共通認識を得ながら進めていく必要があると考えます。ペーパーレス化による経費削減効果もさることながら、いなべ市議会のようなICT基本方針の策定も視野に入れながらの検討が必要ではないかと感じたところです。
その後、いなべ市議会では令和2年にSIMモデルのタブレット端末の導入、ペーパーレス会議システムと議会グループウェアの導入を行っています。ここで採用されたペーパーレス会議システムはSide Booksで当局の採用したものと別のシステムであったとのことですが、1ライセンスで50端末まで使用できることから、議会で余っているライセンスを付与することで、当局側に追加の負担もなく運用が図れているとのことでした。システムが違うことで管理権限を議会側で制御でき、支障なく運用できているそうです。
また、スケジュール管理等においてはGaroon(サイボウズ)という会議グループウェアを使用しており、議会全体のスケジュールをリアルアイムで共有ができ、資料も随時更新できることから事務局等の負担も軽減されるとともに、議員側の仕事の効率が向上したほか、予め資料を確認できるため議論が深まるなどの良い効果が多数見られています。
いなべ市議会で導入しているペーパーレス会議システム及び会議グループウェアは共に多くの議会でも導入されているものではありますが、実際の現場での運用や議会事務局の立場もお伺いをする中で、今後桐生市議会において具体的な議論を深める上でたいへん参考になりました。しっかりとした議論を重ねることが前提ではありますが、早急に結論が出せるよう、議会運営員会や議会改革調査特別委員会を中心として調査・研究及び議論を深化させていきたいと思います。
最後になりますが、たいへんお忙しい中、丁寧なご対応をいただきましたいなべ市議会の皆様に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。