持続可能な農業実現に向けて。宮崎県総合農業試験場
少し時間が経ってしまいましたが今月頭に行ってきた桐生市議会 経済建設委員会の行政視察の3日目のご報告です。
3日目は宮崎県総合農業試験場にお伺いいたしました。視察内容は「スマート農業について」となります。宮崎県は年間の平均気温が17℃と温暖で日照時間や快晴日数は全国トップクラスと農業に適した地域であり、野菜ではキュウリが全国1位、ピーマンが2位、焼酎用の里いもで3位となっているほか、畜産でも牛が全国3位、豚が2位、鶏が1位と軒並みトップクラスに位置しています。
桐生市の農業で盛んな部分と比較すると、施設園芸としてのきゅうりや、養豚などが共通項目となりますが、今回は特に稲作や施設園芸を中心とした野菜におけるスマート農業の仕組みを中心にお伺いをさせていただきました。群馬県にも農業技術センターという農業技術の開発拠点がありますが5つの施設に分散しています。一方で、宮崎県総合農業試験場も複数拠点があるものの、今回お伺いさせていただいた本場の規模は61haと特に大きいのが特徴的で、農業に対して宮崎県が特に力を入れている様子が伺えます。
宮崎県の農業で有名なものと言えばブランドにもなっているマンゴーが挙げられます。その他、スイートピーなどの花卉類やキンカンなども含めて、宮崎県が強みを持つ品種の改良や育成などもこちらの農業試験場において行われてきました。また、前記のキュウリやピーマンの他、宮崎固有のナスの品種があるなど、夏野菜に強い地域のようですが、なぜかナスは生産高が多くないそうです。その点を職員さんに確認させていただいたところ、東京などの大消費地まで遠く輸送時間がかかるため、ナスの生産には向かないとのことでした。更に付け加えると、キュウリやピーマンなども生産コストに加えて消費地までの輸送費がかかり、競争力を高める上での障壁となっている印象です。
そのような観点から考えると、桐生市は東京という大消費地に近く、ナスなど日持ちのしない野菜の生産に向いており、輸送費も低く抑えられることから「新鮮」で「安い」野菜を生産できると言えます。地理的なポテンシャルが高いということを認識したうえでの戦略もしっかり持っておく必要がありそうです。
座学のあとは、スマート農業の実例として施設園芸におけるきゅうりの溶液栽培技術の実証を行っている現場を実際に見させていただきました。従来の固形肥料でなく、固形培地と液体肥料により管理された栽培方法で、ハウス内の温度湿度や二酸化炭素量も制御することにより、通常の2倍近い収穫が可能となるようです。これらの技術は結果として環境負荷の低減にも繋がり、持続可能な農業に向けての一つの答えになり得る技術だと感じました。当然ながら、現在のネックは費用面とのことで、現在宮崎県総合農業試験場においては、いかに低コストで実現ができるかに力を入れています。
桐生市においても新里地区を中心にきゅうりやナスのハウス販売が盛んで、就農者の減少による農家一軒当たりの作付面積は増加傾向にあります。まだまだ少子高齢化により就農人口の減少が予測される中、生産高を維持していくためには、生産性の向上が絶対的に必要であり、そのためにはスマート農業などの技術も適切に導入できる環境が必要であるとも感じています。今回視察をさせていただいた宮崎県総合農業試験場の事例を参考とする中で、桐生市内の農業の生産性の向上及び、持続可能な農業の実現に向けて、必要な視線策を速やかに行っていく必要があると感じました。
最後に、業務がたいへんお忙しいなかご対応をいただきました宮崎県総合農業試験場の皆様に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。