あらゆる手法で公民連携の推進を。宇都宮市に学ぶ
10月28日、29日の2日間、桐生市議会 公共施設のあり方等調査特別委員会の行政視察に参加。1日目は栃木県宇都宮市に寄らせていただきました。言わずと知れた栃木県の県庁所在地であり、北関東最大の人口約51万人を擁する中核市となります。最近では昨年8月に開業したLRT(ライトライン)が大きな話題です。
宇都宮市では、2016年から10年間の計画期間で公共施設等総合管理計画を策定し、公共施設の維持管理・再編等の中長期的な総合管理を推進しています。施設配置や地域拠点の設定においては「ネットワーク型コンパクトシティ」を意識した計画となっており、これは富山市などで提唱されたコンパクトシティ&ネットワーク、交通軸に沿って拠点を配置していくいわゆる串と団子のようなまちづくりを推進していく考え方となります。LRTの整備もこのような考え方に基づいて行われているものです。
宇都宮市の公共施設等総合管理計画の特徴は、廃止施設がある一方で、児童相談所や体育館の新設など、新たな施設の建設も行いつつ、総量管理を進めているところにあります。そこで、新たな施設や既存の施設を効率的に運営していくために、民間活力の導入としてPPPやPIFの導入を積極的に推進しています。PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ:公民連携)とは公共と民間が連携して公共サービスの提供を行うことで、PFI(プライベイト・ファイナンス・イニシアティブ)とは公共施設等の設計、建設、維持管理及び運営に、民間の資金とノウハウを活用し、公共サービスの提供を民間主導で行うことで効率的かつ効果的な公共サービスの提供を図るという考え方。PFIはPPPの代表的な手法の一つとなっています。とはいえ、その手法も多種多様にあり、宇都宮市でも複数の方式が採用され、または検討されている現状を確認させていただきました。
まず、斎場の建替えにおいてはPFI事業の中でもBTO方式を採用し、民間が資金調達をして設計・施工した施設を完成後に所有権を公共に移転、そして民間に指定管理で運営をしてもらうという方式を取っています。ここで特徴的なのは、設計・施工したSPC(特別目的会社)が運営・維持管理を含めて請け負うということです。設計・施工と運営・維持管理を一つのSPCが担うことで、当初より管理・運営を想定した設計・施工ができることがメリットになってきそうです。ただし、現在は資材費や労務費が上昇する傾向がある中で、SPCが当初計画通りの予算で施設整備を完成させることができるのかなどの懸念も想像されます。なお、完成後も所有権を公共に移さないBOTという方式もあり、現在桐生市・みどり市で検討されている斎場の再整備にあたっても考慮すべき部分であると感じました。
その他、宇都宮市では施設改修型の指定管理制度を導入して森林公園の整備を地元企業による共同体に委託したり、Park-PFIにより都市公園内に飲食店や売店等の整備を検討しているなど、様々な方式のPPPにチャレンジしているのが印象的でした。
特に今後桐生市でも参考にできそうな部分としてはPPP/PFIプラットフォームが挙げられます。PPP/PFIは実績の少ない地元企業にとっては参入への障壁があり、そもそも地元企業が担い手として育たないと導入が進んでいかない、もしくは受注が市外企業ばかりになってしまうという懸念があります。そこで宇都宮市ではプラットフォームを作り、情報発信や勉強会などをすることで地元企業が参入しやすい環境づくりに取り組んでいます。指定管理制度も含めて、地元企業がより参画しやすい土壌を作っていくということは桐生市にとっても取り組んでいかなければならない課題であり、宇都宮市の取組みはたいへん参考になるものであると感じた次第です。
今回の視察ではPPP/PFIの話題を中心にお伺いをしましたが、桐生市においても民間活力の積極的な導入は行政の効率化のみならず、地域経済の発展にも寄与するものであり、引き続き積極的に導入を図るとともに、これまで導入していない方式についても研究・検討していくべきであると強く感じています。宇都宮市の事例に学ぶ中で、桐生市においても公民連携がより一層推進されていくことを期待したいです。
最後になりますが、ご対応いただきました宇都宮市議会の皆様、宇都宮市当局の皆様に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。