商店街振興組合発祥の地に学ぶ。全国商店街青年部指導者研修会in愛知 その①

少し前のお話になりますが、7月に2日間の日程で全国商店街青年部指導者研修会に参加させていただきました。この研修会は全国の商店街青年部が集い、今後の地域経済を担う若手経営者及び後継者を対象に、商店街活性化に資する知識と繋がりづくりを行うことを目的としており、今回も全国から約70名が集まっての開催となります。なお、私は群馬県の青年部長としての参加です。

会場となったのは名古屋市の中日ホール&カンファレンスで、再開発が進む名古屋市栄地区の中でも今年開業したばかりとひときわ新しい中日ビルの中にあるコンベンション施設となります。さて、なぜ今回の会場が名古屋なのかと言うと、商店街振興組合法に基づく商店街振興組合は全国に約2,000組合ありますが、名古屋が商店街振興組合の発祥の地と言われているからです。法整備のきっかけが昭和34年の伊勢湾台風だとされており、愛知県から商店街振興組合の法整備に向けた運動がスタートしたといっても過言ではありません。現に、商店街振興組合連合会の全国第一号が昭和38年に「名古屋市商店街振興組合連合会」として発足するに至っています。

研修会は全国青年部長の加戸慎太郎氏による「商店街振興組合は世界でも日本にしかない。共助の仕組みがあることが大切である」という主催者挨拶からスタート。来賓挨拶では愛知県商店街振興組合連合会 理事長の坪井明治氏や愛知県副知事の古本伸一郎氏に加えて、名古屋市長の河村たかし氏からは「商売が一番中心である」という熱いエールもいただきました。

さて、1つ目の研修は栄町商店街振興組合理事長であり、愛知県商店街振興組合連合会 理事長でもある坪井明治氏より「栄町商店街振興組合の国際交流事業について」のご講演をいただきました。言わずと知れた名古屋を代表する繁華街である栄町。そんな栄町商店街ではフランスのモンテーニュ商店街と姉妹提携をしています。元々はこれからのまちづくりは国際化であると思いから「世界のNo.1の商店街と提携をしたい」との着想を得てスタートしたこの提携。世界一となるとニューヨーク5番街かパリのモンテーニュ商店街が有名ですが、歴史のあるモンテーニュ商店街と姉妹提携をしたいとのことでアクションを開始したそうです。シャネルやディオール等の世界の高級ブランドの本店が立ち並ぶ歴史あるモンテーニュ商店街。契約にはたいへん苦労したそうですがコシノ・ジュンコさんに紹介していただくことで直接お願いすることができたとのこと。栄町商店街は何年の歴史を持っているのかとの問いに「城下町で400年の歴史がある」との回答にカタラン会長もびっくりされ「我々のお兄さんだ」と尊敬の念を抱いていただくことができたとのエピソードも印象的でした。その結果、姉妹提携の調印式に至ったのは1998年の出来事です。その後2014年にベルギー ルイーズ商店街とも姉妹提携を結んでいます。これらの国際的な姉妹提携が商店街とどのような関係があるかというと、様々ご意見があるかと思いますが、これらをゼロから実現しようとするバイタリティーと、それらを実現した商店街の皆様の地域に対する自信や誇りの高まりなどに対しては図り知れ効果があったのだろうと感じた次第です。

続いての研修は「愛知県及び名古屋市商業者等による地域貢献活動の推進に関する条例制定について」と題して、①条例制定を目指した商店街活動として藤が丘中央商店街振興組合 理事長 山田直之氏より、②愛知県商業者等による地域貢献活動の推進に関する条例の説明として愛知県 経済産業局 中小企業部 商業流通課長 西山透氏より、③名古屋市商業者等による地域貢献活動の推進に関する条例の説明として名古屋市 経済局 商業・流通部 担当課長(大店立地担当) 虎澤浩章氏より、④行政・大型店・商店街の連携事例として名古屋商工会議所 商務交流部 流通・観光・街づくりユニット長 長瀬栄治氏よりそれぞれご説明いただきました。条例制定の契機となったのは大店立地法に基づく大型店の進出です。条例ができる前は形式だけの地元説明会となっていたが、条例ができ商店街振興組合は公的な団体であるという位置付けがされたこと、商業者等による地域貢献が条例に示されたことなどにより、大型店が商店街イベント等に協力的になったとのことでした。なお、名古屋市の条例は令和4年4月1日に、県の条例は令和6年4月1日に施行されており、どちらも大型店は「地域貢献計画書」に基づく地域貢献活動が求められ、地域貢献活動について公共的な団体(地域住民により組織された団体、商店街振興組合等)から定期的に意見を聞き、その内容を大型店に通知し、大型店は「地域貢献計画書」を見直すこととなっています。これらの条例が商店街振興組合連合会などの要望活動により実現しているのも特筆すべき点。愛知県では商店街振興組合が積極的に政策提言を行っているとともに、非常に強い政治力を発揮している現状を感じました。

行政・大型店・商店街の連携事例としては「な・ご・や商業フェスタ」が市内の中小小売事業者と大型店が一体となって市内全域で大々的に展開されており、実行委員会方式で名古屋商工会議所が事務局を務めていることも特徴的です。構成団体は名古屋商工会議所、名古屋市商店街振興組合連合会、市内3商工会、名古屋専門店協会、名古屋地区の百貨店・チェーンストア・専門店等多岐にわたります。景品事業として7日間の期間中、参加店において合計2,000円ごとにラッキーカードを配布し、抽選により合計7,585本もの豪華景品を進呈。更にはプレミアム商品券事業も行政単独ではなく実行委員会方式で名古屋商工会議所が事務局(名古屋市との共同運営)としてやっているとのことで、スケールが非常に大きいと感じました。ちなみに、発行総額は国内最大級の325億円(紙 221億円、電子マネー 104億円)で事前申込による抽選販売、プレミアム率を30%、参加店は2,000店以上だそうです。

商店街振興組合発祥の地というだけあり、スケールにただただ圧倒される名古屋の取り組み。これだけ規模が大きいと正直、群馬県に持ち帰る事例としてはあまり参考にならないというのが本音ですが、そのマインドと熱量については負けてはいけないという思いと、群馬県内の商店街の状況に対する危機感を改めて感じた次第です。商店街振興組合法が制定された経緯と、そこに込められた街を再建したいという熱い想いを改めて振り返る中で、次代に則した商店街の在り方について改めて考えていきたいと思います。

(つづく)