市民の資産である公共施設をマネジメントするということ。テラス沼田に学ぶ

先日会議で「テラス沼田」へ。1993年に建設された第三セクターの再開発ビル「グリーンベル21」の核テナントである沼田サティが撤退後、紆余曲折を経て沼田市が約5億9千万円で同ビルと駐車場棟を取得。市役所や市議会、歴史資料館や市民活動センター、商工会議所などが入る複合施設として2019年に「テラス沼田」開業しています。建物は7階建てで市役所は3~5階に配置され、1階にはカフェなどが入居している他、食品スーパーの誘致も行われましたが、残念ながらそちらは頓挫したままのようです。建物の延べ床面積は約2万4千㎡で、改修費は約51億円となっています。

一方で桐生市役所の現在見込まれている概算事業費は約94億6千万円で延べ床面積は1万2千㎡となります。新築と既存施設改修とでは単純比較はできませんが、大型店の撤退という町のピンチに対して行政によるテコ入れを行い、複合施設を整備するという手法は5万人規模の都市としては大英断だったと思います。

それ以上に私が注目しているのはテラス沼田に移転したことで空いた旧市役所跡地を賃貸借で民間に貸し出して収益を生み出していること。35年間の賃貸借契約で年額は813万2,671円として、群馬県内最大規模となるルートインホテル沼田が昨年開業に至っています。固定資産税と都市計画税を合わせるとルートインホテル沼田だけで約2,000万円/年(5年間の減免制度あり)の直接的な財政効果が見込まれるほか、観光や雇用で試算すると年間約33億円の経済効果が試算されているそうです。

地方都市といえども公共施設はその街の一等地にあるもの。公共施設を漠然と所有し続ける、計画なくその場しのぎで立て替えや改修を行っていくということは、市民の資産を健全に運用せずに価値を下げてしまうことに他なりません。県内他市よりも圧倒的に公共施設の延べ床面積が多い桐生市において、もっと多くの選択が取り得ることは明白です。沼田市の事例に学び、民間活力も活用しながら市民の資産である公共施設を健全にマネジメントしていく視点が重要だと強く感じます。