実感に繋がる議会改革へ ー犬山市議会視察ー
昨日より、議会運営委員会の委員会視察で愛知県に来ています。昨日は愛知県の最北端、岐阜県と県境を接する犬山市にお伺いさせていただきました。国宝犬山城で有名な約7万4千人の都市となります。視察のテーマは「議会改革のとりくみについて」となり、とりわけ先進的な取り組みとして注目を受けている「市民フリースピーチ制度」の取り組みを中心にお話をお伺いさせていただきました。
今回の視察にあたっては、犬山市議会事務局の皆様はもとより、議会運営委員長 三浦 知里 様と、群馬県に縁がある柴田 浩行 議員にも同席いただき、意見交換スタイルで様々な情報交換をさせていただきました。市議会の皆様によるご丁寧な対応に心から感謝申し上げます。
犬山市では平成22年に任意の組織である議会改革推進員会を設置して議会改革の取り組みをスタートさせました。桐生市では平成23年から議会改革の取り組みを始めており、ほぼ同じタイミングと言えます。議会基本条例の制定や、市民との意見交換など基本的な取り組みのスタート地点としては桐生市議会が歩んできた経緯と共通している点が多い印象をうけました。平成29年になり、議会改革委員会を設置して「市民にとってより役立つ議会に」という視点で、以下の3点を強化するための議会改革をスタートさせています。1つ目が「市民参加」、2つ目が「議員間討議」、そして3つ目が「議会の政策立案・政策提言力の向上」です。1つ目の「市民参加」を強化していくことは議会改革の大きな柱の一つであり、桐生市議会においても年4回の議会報告会・意見交換会の開催や、各種市民団体との意見交換会、議会モニター制度など、様々な取り組みを実施しているところでありますが、安城市議会の特徴的な取り組みとして「市民フリースピーチ制度」が挙げられます。
「市民フリースピーチ制度」とは、希望した市民が議場で、犬山市政に関する発言を5分以内で議員や議会に対して行うことができる制度です。以前に名古屋市会においても、同様の制度を視察させていただいた機会がありましたが、名古屋市会では委員会において市民の発言機会を認めているものの、発言に対して議会としては特に対応を設けていませんでした。一方で犬山市議会の「市民フリースピーチ制度」では、言いっぱなしではなく、市民の発言内容について議会として対応するという方針をとっています。
「市民フリースピーチ制度」の具体的な実施方法ですが、議会の会期中に行うこととしており、これまでに3月、6月の定例会開催日の夕方6時半から開催。また、9月定例会では日曜日の10時に開催したそうです。開催に日時の設定からしても、市民が参加しやすい時間帯に配慮していることが伺えます。発言者についてですが、市内在住・在勤・在学者なら誰でも可能としており、年齢などの制限はありません。1回の開催につき発言者は7名まで(超えた場合には抽選)とし、一人5分間(1項目に限る)の時間が与えられます。申込書には発言項目・内容を記載するものとし、議長・副議長・議運の正副委員長で内容を確認しているそうです。批判・要望の場ではなく、建設的な意見を発表する場にということを前提としており、批判めいたものや2度目の申し込みなどについては協議して対応しているそうですが、これまで議会側から却下した例はありません。また、市民の発言の中で不明な点などがあった場合には、その場で議員から市民に対しての質問もできるとのことでした。
「市民フリースピーチ制度」の中で発言された内容については、全員協議会を開催し、議員間討議で意見交換を実施して、対応方法が検討されます。意見集約できた場合には議会として市当局の対応を確認し、集約できなかった場合でも常任委員会や会派、有志グループ、または議員個人などで対応して、全ての質問について報告書を作成しています。具体的な政策提案に至った事例としては「市有施設の使用料の市内居住者の優遇」などがあるそうです。また、小学生の女の子がお母さんと登壇して「中学生になるとなぜ制服にスカートしかないのか。パンツスタイルも認めるべきでは。」といった発言あり、今後対応していくといった例もお伺いさせていただきました。
本会議場を利用して実施しているフリースピーチ制度は、正に市民に開かれた議会を具現化する象徴的な取り組みだと感じます。一方で、勇気を持って発言してくださる方は一部の市民に限られてしまったり、意見集約できない提案への対応の難しさなど、課題点も多いように感じる部分もあります。犬山市においてもまだ3回と開催実績が少なく、模索しながら最適な開催方法についてのトライ・アンド・エラーを繰り返している段階だと思いますので、今後桐生市において導入しうる制度になるかどうか、しっかり研究検討をしていく必要があるだろうと思います。
その他にも犬山市議会においては親子で参加して質問もできる「親子議場見学会」の開催や、公募の女性が1日議員になり一般質問等を行う「いちにち女性議員」の取り組みなど、市民に議会を身近に感じてもらうための仕掛けづくりを的確に行っているように感じました。また、犬山市議会が積極的に導入している議員間討議の促進も、ぜひ桐生市に反映していきたい取り組みです。
最後に三浦 委員長がおっしゃった言葉が印象に残っています。それは次のような言葉です。
「議会に届ければ何とかなるという期待を裏切らないように努めている。」
議会活動を通じて市民の期待に応えていく仕組みを作っていく。ここまでは形式を整えれば多くの市議会において容易に到達できると思います。しかしながら、それらに実態を持たせて、市民に実感してもらえる動きにしていくには、多くの努力と創意工夫、そして挑戦と修正の繰り返しが必要なのだと思います。桐生市も犬山市議会に見習い、桐生市らしい議会と市民の皆様とのパイプ作りに取り組んでいきたいと思います。