公園の民間活用の先進地を視察

公園での公民連携

本日は関東若手市議会議員の会 千葉ブロック研修会に参加させていただきました。今回の研修会場は千葉市。平成25年から公園での公民連携をスタートさせた公民連携(PFI、PPP)先進地です。

今回の研修テーマは「シェアリングエコノミーについて」と「都市公園公民連携について」の2つ。私は日程の都合で2つ目の「都市公園公民連携について」のみ参加させていただきました。

始めにお伺いした事例は、今回の研修会場ともなった幕張新都心に隣接する稲毛海浜公園です。稲毛海浜公園は昭和52年に開設された総合公園で日本一長い人工海浜を有することでも知られています。

稲毛海浜公園では各施設の老朽化が進行し、それらの撤去費用として2,100万円が必要と試算されるような状況となっていました。利用者が低迷し、賑わい創出が課題となる中、公園の魅力向上を目指した市民アンケートを実施。飲食への市民ニーズが多数あることを把握したことから、民間事業者の募集へと繋がっていきます。条件は「海の見えるレストラン」を作ること、建築面積は2,000㎡を上限とする、事業期間は最長22年など。更に重要なポイントだと感じたのは原状回復に必要な費用に相当する補償金を市に預託することを求めてたことです。採算性が合わず、事業者が撤退したとしても市に負担が及ぶことがない仕組みとなっています。

平成25年12月に事業者の決定、平成26年3月着工と順調に計画が進み、平成28年3月に今回の会場ともなった「ザ・サーフ オーシャンテラス」が開業するに至りました。この施設の機能はレストラン、ホール、バンケットなどとなっています。開業後の効果としては利用者数は初年度の平成28年度に約9万4千人、平成30年度では約8万2千人と順調に推移しており、市の維持管理費の削減額としては年間3,700万円の使用料が公園の維持管理費として充当されています。

現在は「INAGE SUNSET BEACH PARK」と銘打った第二弾の公民連携の計画が進展。事業者の負担35.7億円でグランピング施設・バーベキュー場・温浴施設・宿泊施設(稲毛記念会館のリノベーション)・プールの改修を実施、市の負担24.8憶円で砂浜やトイレの改修・ウッドデッキ・電気上下水改修を行い、今後20年で48億円の財政効果が期待されるとの説明でした。進化し続ける稲毛海浜公園は、これからも公民連携の先進事例として注目を浴びそうです。

さて、ここまではあまり桐生市にとっては少し現実離れしている話だったかも知れません。稲毛海浜公園は背後に位置する千葉市の98万人の人口、そしてオーシャンビューのという最高のロケーションがあったからこそ成しえた事例とも言えます。もう少し身近に感じる事例もいくつかご紹介いただいたので、以降に記載します。

まず、昭和の森ユースホステル施設跡及びキャンプ場運営の事例です。当該公園は千葉市内最大の都市公園であるにもかかわらず、両者が減少する傾向にありました。また、施設の解体には8,000万円必要という状況を踏まえ、ユースホステル跡地とキャンプ場の運営を対象に民間事業者を募集し、ロッジ(合宿を基軸とした宿泊施設)、キャンプ場、バーベキュー場、多目的広場の運営を目的として期間10年間、使用料300万円/年で民間事業者に貸し出しました。その結果、施設全体の利用者は初年度(平成28年)の16,785人から平成29年度には40,802人へと増加、指定管理に4,000万円を支払っていた経費が、現在では300万円の使用料収入が得られるようになったそうです。

もう一つの事例は高砂公園。こちらは「企業参加型パークマネジメント」の考え方で、イオンモールなどのショッピングモールに囲まれた都市公園を、ショッピングモールを運営しているイオンモール(株)に公園の管理権(パークマネジメント)を売却、かかる費用は提案者の負担として、更に使用料を年間180万円納めてもらっています。イオンモール(株)では賑わいの創出として年間16件のイベントを行い、2万6千人の集客を集め、財政効果は維持管理費300万円減、管理使用収入180万円、計480万円にのぼります。公園トイレの清掃頻度の増加など、ハイグレードな維持管理にも繋がったそうです。

最後の事例は泉自然公園。こちらは風致公園で山野草や桜が有名な公園とのことです。桐生で例えるなら吾妻公園や自然観察の森のような位置付けでしょうか。この公園もピーク時の年間36万人から近年では15万人程度に利用者が減少していました。豊かな自然環境を有する公園の魅力向上に繋がるもの、風致公園としての機能を損なわず、公園管理水準の向上や利用者の増進に繋がる事業として民間事業者を募集し、駐車場等収入を活用した魅力発信事業(2年間の管理許可、使用料 年間186万円)と、自然共生型アウトドアパークの整備運営(10年間の設置許可で、年間使用料148万円)の2つの事業が具現化しています。導入後の効果としては公園利用者が開始年度(平成28年度)の148,742人から平成29年度の190,934人に伸び、アウトドアパークの利用者は年間18,748人に上るそうです。

千葉市における都市公園での取り組みを羅列いたしましたが、全てに共通しているのは市が守ってほしい最低限の条件を提示しながら、民間に自由に提案をしてもらっていることです。公園はタダで維持管理できるものではなく、公園が一つ存在するだけで、枝の選定や草刈り、トイレ清掃など様々な費用が掛かり続けます。千葉市のように使用料を受けとることができれば理想的ではありますが、例えば年間数百万円掛かっていた維持管理を民間事業者に担ってもらうことによって、市の負担がゼロになり、民間も公園で収益事業ができる。こういったwin-winの形が確立できれば、地方都市でも充分に導入していく余地があるのではないかと感じました。

幸いにも桐生には魅力的でありながらも活かしきれていない公園がたくさんあります。これらの公園を活用していくためには、市民の皆様が望む公園の形を把握して、公園の位置付けをしっかり理解し、行政と民間がしっかりコミュニケーションできる環境を醸成していくことが大切となります。

桐生市ではbase on the GREENなどの公共空間活用型の公民連携社会実験が走り出したばかり。恒久的な形での公民連携の実現に向けて、次のステージに進むべきよいタイミングなのかもしれません。今回学んだことを活かしながら、しっかり具体的な提案に繋げていきたいと思います。

最後にご設営いただいた千葉ブロックの皆様、有意義な研修をありがとうございました。